プロジェクトストーリー
HBA × 音更町 × HOTnet:ローカルLLM搭載ロボットを利用した自治体オペレーションの効率化実験

株式会社HBA
技術本部 プロダクトイノベーション技術部 部長
大山 晃一さま

音更町
総務部情報政策担当次長
情報政策課長(兼)
山田 和弘さま

北海道総合通信網株式会社
技術営業部 営業支援グループ
上級スペシャリスト
門脇 多人

北海道総合通信網株式会社
技術営業部 営業開発グループ
上級スペシャリスト
池野 桂司
プロジェクトのはじまり

池野
このプロジェクトは、前年度までに行った実験を発展させて取り組んだ、私たちHOTnet主導の実証実験です。

門脇
前年までのプロジェクトでは、HBAさまにご協力いただいて、弊社の共創空間『 Akallabo』の入口にコンシェルジュロボットを配置し、弊社で独自に開発したローカルLLM(閉域環境の中で動くAIの大規模言語モデル)をインストールしてお客さまをお迎えし、対話させるという実験でした。

池野
今回は、より広いスペースで、実際の業務レベルで利用可能かどうかという実証を行うべく、引き続きHBAさんにご協力いただきつつ、実験フィールドとして音更町役場を提供いただいたというわけです。


大山さま
なぜ音更町だったんですか?

池野
実フィールドでの展開を考えた時に、真っ先に浮かんだのが担当の山田さんの顔だったからです(笑)
山田さんはこういった新しい取り組みに対して非常に柔軟な考えをお持ちで、必ず話を聞いてくれるんです。
山田さんはこういった新しい取り組みに対して非常に柔軟な考えをお持ちで、必ず話を聞いてくれるんです。

山田さま
はい。今回も面白そうだからやればいいかなと素直に思いました。
また、この話を実際にもってきてくれたHOTnetさんの営業担当者が音更町出身だったという縁も後押しになりました。
また、この話を実際にもってきてくれたHOTnetさんの営業担当者が音更町出身だったという縁も後押しになりました。

池野
音更町役場のみなさんも非常に協力的で、実験の期間中待機するための部屋を用意してくださったり、とてもスムーズに実験に取り組むことができました。

山田さま
「いつから実用化できるのか」とか「ロードマップはどうなっているのか」といったことを細かく問う人もいるかもしれませんが、私は「まずやってみないと世の中は動いていかない」と考えているので、面白そうという感覚に従って受け入れ体制を整えました。

実証実験:来庁者案内用ロボットの運用

池野
実際の実験内容はこうです。まず音更町の役場に来庁された方が、入口を入ってすぐの場所でロボットに出迎えられます。
その際に、どこに行きたいかや何をしたいかを伝えると、ロボットに搭載されたローカルLLMが役場内のホームページ情報に基づいて、必要な窓口へと先導して案内するというものです。
実際にどの程度正確に案内が出来るのか、職員の省人化に寄与できるのかといった部分を中心に、5日間に渡ってデータを取っていくことにしました。
その際に、どこに行きたいかや何をしたいかを伝えると、ロボットに搭載されたローカルLLMが役場内のホームページ情報に基づいて、必要な窓口へと先導して案内するというものです。
実際にどの程度正確に案内が出来るのか、職員の省人化に寄与できるのかといった部分を中心に、5日間に渡ってデータを取っていくことにしました。

大山さま
今回のプロジェクトの特徴の一つが、ロボットが引き継ぎを行う仕組みです。
音更町役場は2階建ての建物です。ロボットは上下の移動が出来ないため、2階の窓口に案内をする際には、1階のロボットがエレベーターまで案内したうえで、来庁者が2階に到着すると、こんどは2階のロボットが情報を引き継ぎ、最終目的地まで案内するんです。
こういったフィジカルな仕組みの部分を、私たちHBAがサポートさせていただきました。
音更町役場は2階建ての建物です。ロボットは上下の移動が出来ないため、2階の窓口に案内をする際には、1階のロボットがエレベーターまで案内したうえで、来庁者が2階に到着すると、こんどは2階のロボットが情報を引き継ぎ、最終目的地まで案内するんです。
こういったフィジカルな仕組みの部分を、私たちHBAがサポートさせていただきました。

門脇
私はAIの部分、ローカルLLMの調整やプログラミングなど、ソフトウェア部分を担当しました。
そもそも、なぜ通信回線やデータセンターの提供などを主なサービスとしている弊社が、ロボットやローカルLLMの実証実験を行っているのかというと、そこに我々にしかできない強みがあるからなんです。
一般的に現在のAIには、オープンなクラウド型と、クローズドなローカルLLMの二種類が存在します。前者はChatGPTやGeminiとして知られる、インターネット上の膨大な情報を学習させた、汎用的なAIです。
変わって後者のローカルLLMとは、外部には出したくない情報、例えば企業や自治体が持っている個人情報や、門外不出のノウハウなどを、外部から遮断したサーバの中でAIに学習させ、限定的な範囲で利用するAIです。
そもそも、なぜ通信回線やデータセンターの提供などを主なサービスとしている弊社が、ロボットやローカルLLMの実証実験を行っているのかというと、そこに我々にしかできない強みがあるからなんです。
一般的に現在のAIには、オープンなクラウド型と、クローズドなローカルLLMの二種類が存在します。前者はChatGPTやGeminiとして知られる、インターネット上の膨大な情報を学習させた、汎用的なAIです。
変わって後者のローカルLLMとは、外部には出したくない情報、例えば企業や自治体が持っている個人情報や、門外不出のノウハウなどを、外部から遮断したサーバの中でAIに学習させ、限定的な範囲で利用するAIです。

山田さま
自治体の場合は、住民の皆さんのさまざまな情報を取り扱っていることもあり、業務を効率化するためとはいえ、オープンなAIを自由に利用するのは難しいんです。

門脇
その点、ローカルLLMであれば、生成AIへの質問やその回答内容が外部に漏れることはありませんので、自由に利用することが出来るというわけです。とはいえ、ローカルLLMには明確なデメリットがあります。それは場所に縛られるということです。

池野
簡単に言うと、インターネット回線に接続できないので、構築したローカルLLMのサーバを、利用する場所に直接置かなければいけないんです。これだと、メンテナンス性に著しく欠けますし、詳しい人が現場に常にいる環境で無ければ運用が難しいため、導入のハードルがとても高くなってしまうわけです。

山田さま
門脇さん、今回のプロジェクト中は一回も音更町に来なかったよね?(笑)

門脇
ずっと札幌にいました(笑)

池野
これが我々の強みです。弊社は、これまで長い年月を掛けて構築した北海道内の独自の回線網を持っています。その回線網を利用して、我々のデータセンターと音更町を秘匿回線で繋ぐことによって、専門家である門脇がいる札幌のデータセンターに構築した、音更町専用のローカルLLMを、音更町役場という遠隔地で利用することができたわけです。

大山さま
逆に私は、ロボットの調整のため実験期間内ずっと音更町に居ました(笑)
現場で起こっている事象を常に札幌の門脇さんと共有して、すぐに門脇さんがプログラムやアルゴリズムを見直してロボットに配信してくださるというやり方で、実験をすすめていきました。
現場で起こっている事象を常に札幌の門脇さんと共有して、すぐに門脇さんがプログラムやアルゴリズムを見直してロボットに配信してくださるというやり方で、実験をすすめていきました。

池野
町民の皆さんの反応はいかがでしたか?

山田さま
ちょうど議会の会期中だったこともあって、新聞記者さんなども来ていたので、取材をしていただきました。
住民の皆さんからはいつから動き始めるの?といったポジティブな反応もいただきました。
とはいえ、課題もいろいろ見えましたね。
住民の皆さんからはいつから動き始めるの?といったポジティブな反応もいただきました。
とはいえ、課題もいろいろ見えましたね。

実験結果

門脇
まずはレスポンスの問題ですね。通常AIが思考するのには時間がかかります。
今回のルート案内は、当初10秒ほどの思考時間がかかっていました。
今回のルート案内は、当初10秒ほどの思考時間がかかっていました。

山田さま
来庁者が質問して、10秒待つというのは、結構長く感じるんです。受付の担当者に言えばすぐに返してくれるわけですから。

大山さま
そうですね。実際に現場で見ていても、そう感じました。

門脇
それで、「4秒以内での回答」を目指してチューニングしていきました。HBAさまが持っているノウハウなども活用させていただきながら、結果として目標を達成することができました。これも、一般のユーザーの方を対象に実験できたからこそ学べた部分です。

池野
あとは、AIの精度の問題もありました。自分の希望する場所にたどり着くことが出来なかった方がいたんです。

門脇
AIには事前に、役場のホームページに掲載されている各課の案内や問い合わせ先といった情報を、AIが解釈しやすいかたちに整形して読み込ませていました。ところが、これが逆に働いてしまったんです。
AIは学んだ事柄を全て使って、総合的に来庁者の希望の場所がどこに当たるのかを考えます。でも、文脈を考慮するが故に、キーワードに引っ張られすぎるという問題が発生したんです。
例えば、「水道料金を払いに来ました」という方の「水道」という言葉に引っ張られてしまい、本来は「出納窓口」へ誘導すべき所を、「上下水道課」へと案内してしまうといったケースです。
AIは学んだ事柄を全て使って、総合的に来庁者の希望の場所がどこに当たるのかを考えます。でも、文脈を考慮するが故に、キーワードに引っ張られすぎるという問題が発生したんです。
例えば、「水道料金を払いに来ました」という方の「水道」という言葉に引っ張られてしまい、本来は「出納窓口」へ誘導すべき所を、「上下水道課」へと案内してしまうといったケースです。

大山さま
他にも、「町長室に行きたい」とズバリと言われてしまうと、ホームページ内に「町長室」という言葉がほとんど出てこないため、深く考えすぎてしまい案内が出来なかったと言うこともありました。

門脇
そういう問題は、実証実験の期間中ずっと、フィードバックを貰いながらチューニングしていたのですが、より根本的な設計から考え直すことで、今後の精度向上ができると考えています。

山田さま
でも、今回一番の課題は、なかなか来庁者が利用してくれなかったということですね。

プロジェクトの今後

池野
そうなんです。あまり利用されなかったというのが、今回の一番の課題であり、次回に向けて考えなければいけない部分です。

山田さま
やはり、窓口のカウンターに直接話しかけることができる職員がいる状況で、敢えてロボットに話しかけるというのはハードルが高かったですね。特に日本人は、公の場所で声を出すということに抵抗を感じる人が多いと思うので、難しかったんだと思います。

池野
日本人はまだロボット慣れしていないですしね。ちょうど訪れていた大学生の皆さんは、面白がって話しかけてくれていました。もう少し対象の世代が違ったり、外国人向けの実験だったなら、また異なる結果になったかもしれません。
とはいえ、多くの方にとって、窓口で役場職員の方とフェイス・トゥ・フェイスで話すことに、大きな価値があるということを改めて理解できたのはとても良い収穫でした。
とはいえ、多くの方にとって、窓口で役場職員の方とフェイス・トゥ・フェイスで話すことに、大きな価値があるということを改めて理解できたのはとても良い収穫でした。

山田さま
そうですね。私たちが求めているのは、役場に来た方たちへの対応の最適化であって、ロボットやAIを使うこと自体ではありません。
笑顔の職員がいて、お客さまがそちらに来てくれるなら、今すぐにロボットが必要なわけではないんです。もちろん、人手が不足している自治体であれば、重宝される場所もあると思います。
笑顔の職員がいて、お客さまがそちらに来てくれるなら、今すぐにロボットが必要なわけではないんです。もちろん、人手が不足している自治体であれば、重宝される場所もあると思います。

池野
私たちも目的は一緒です。自治体の方の仕事をいかに最適化できるか。今回は窓口業務という切り口から仮説を立てて実験を行いましたが、今後は職員が対面で来庁者対応できる時間を捻出するために、どのようにバックオフィスをAIの力で効率化出来るかという方向にシフトしてプロジェクトを進めていきたいと考えています。

山田さま
例えば、職員と来庁者の会話をAIが横で聞いていて、来庁者を案内するための情報をどんどん目の前のモニターにサジェストしていくような使い方はあり得ると思います。
そうすれば最終のジャッジは人間が行うので、精度の問題もクリアできますし、十分な知識を持たずに配置された場合でも、適切な案内ができるようになります。AIの助けで職員の成長曲線も早められると嬉しいですね。
そうすれば最終のジャッジは人間が行うので、精度の問題もクリアできますし、十分な知識を持たずに配置された場合でも、適切な案内ができるようになります。AIの助けで職員の成長曲線も早められると嬉しいですね。

門脇
AIの分野は本当に毎日のように技術が進歩しています。最初に話したレスポンスの部分などは、最新のモデルを利用することで、恐らく2秒以内に回答することが出来るくらいに改善できると思います。まだまだやれる分野があります。

大山さま
私たちも、今回の実証実験によって、さまざまなフィードバックデータを得ることが出来ました。
ロボットには様々なカメラやセンサーが取り付けられているので、話しかけた人と話しかけなかった人のデータとか、点字ブロックなどの地面に凹凸のある場所での走行データなど、よりお客さまに寄り添ったロボットの挙動を研究することができそうです。
ロボットには様々なカメラやセンサーが取り付けられているので、話しかけた人と話しかけなかった人のデータとか、点字ブロックなどの地面に凹凸のある場所での走行データなど、よりお客さまに寄り添ったロボットの挙動を研究することができそうです。

門脇
今後もHBAさんのノウハウは、プロジェクトを進める上で欠かせないと感じています。

山田さま
また更なるご提案、楽しみにしています。

取材実施日:2026年1月21日
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音更町さま
1953年に音更町として町制施行されました。人口42,000人(2026年2月末時点)を超える道東エリアの自治体で、十勝平野のほぼ中央部に位置し、北海道内の町村の中で最も人口の多い町として知られています。
基幹産業は農業で、恵まれた水利による肥沃な土壌や日照時間が長いといった地域の特長が活かされています。また、世界でも珍しい植物性モール泉の十勝川温泉は『美人の湯』として知られ、北海道内外の多くの観光客に愛されています。
基幹産業は農業で、恵まれた水利による肥沃な土壌や日照時間が長いといった地域の特長が活かされています。また、世界でも珍しい植物性モール泉の十勝川温泉は『美人の湯』として知られ、北海道内外の多くの観光客に愛されています。

株式会社HBAさま
1964年の創業以来、システムインテグレーション、ソフトウェア開発、クラウドサービス、アウトソーシングサービスの4つの事業領域で、多岐にわたるソリューションを展開されてきました。
民間企業から自治体、官公庁まで幅広いお客さまとの取引実績があり、各種業界のニーズに応じた最適な提案をされています。
お客さまの課題を解決することで社会全体の課題を解決し、だれもが幸せな社会を実現することを目指しておられます。
民間企業から自治体、官公庁まで幅広いお客さまとの取引実績があり、各種業界のニーズに応じた最適な提案をされています。
お客さまの課題を解決することで社会全体の課題を解決し、だれもが幸せな社会を実現することを目指しておられます。
